匙を投げたいけど

匙を投げたいけど

面倒くさがりで面倒なオタクが、脳トレがてら考えたことを書いています。

日常に栞を

詩的な雰囲気でタイトルをつけてみたが、中身はいたって散文的である。



育児ストレスの原因は大小さまざまある。その中で私が地味にじわじわHPやMPを削られているのが、「ほとんどのことが中途半端になる」だ。



自分の記憶では、学生の間は「きっちり最後までやり遂げられること」が評価されることがほとんどだった。

けれど育児が始まってみたら「きっちり最後までやり遂げられること」なんてほとんどない。やりたくてもできない。

そもそも人の評価を気にしない人や、価値観の書き換えができる人は例外だ。が、そうではない人は、自己評価があっという間に下がるのではないだろうか。



育児休暇中は育児と家事に専念できるのだから、やっていけそうだと思う。とくに赤ちゃんだったら一日の大半は寝ているのだから、家事くらいできると思ってしまう。自分も周囲もそう思い込みがちだ。

さらに「せっかく休みなんだから」と、仕事をしている間には手をつけられないと思っていた、時間と手間がかかる家事も予定に組み込んでしまうかもしれない。

育休を終えた今なら断言できる。それは罠だ。



実際に育児が始まってみると赤子は泣くし、思った以上に寝てくれない。右往左往しているうち、家事は容赦なく山積みになっている。しかも、これまで慣れていなかったこともたくさんある。

赤子は目まぐるしくアップデートするので、考えずに体が動くレベルまで家事を身体に落とし込むことも難しい。落とし込んだらすでに次のフェーズへ移行している。成長はありがたいけど、成長はありがたいんだけど!

さらに、自分だけなのか他の人もそうなのか不明なのだが、赤子の泣き声でやってることや考えていたことは雲散霧消するシステムが搭載されてしまった。そのため、赤子が泣き始めると何もかもが強制停止になる。



赤子期を脱したら脱したで、中断がなくなるわけではない。

賛否はさておき、我が家は家事をしたいとき、子どもにテレビを見せている。が、テレビを見ているからといって大人しくしてはくれない。

いまお気に入りなのは、Eテレで流れる歌だ。録画をしてあるので、終わると巻き戻しを要求する。長くて2分で、親は台所からテレビ部屋へ行って巻き戻しをする。我が家は狭小住宅の範疇だが、それでも2分ごとに部屋の往復をするとけっこうな時間と手間がかかる。



なにかを最初からやるよりも、中断されて途中からまた再開するほうが、時間や手間がかかると感じる。

かの名作『動物のお医者さん』でも、羊の毛刈りで他人が手をつけて逃げられた個体(毛刈りが途中)を刈るのはいやだと言っている学生がいた。気持ちがわかる。非常にわかる。あと毛刈りは素人が一人でやるのは至難の業だと思う。



育児中は、家事その他が今まで通り片付かないのは当然なのだ。育児“休暇”だからといって、普段通りもしくはそれ以上にちゃんと家事などができている人は中断に強いか、もともと能力がスーパー高いかだと思う。育児中に家事その他が片付かないことを「言い訳だ」と断じる方は、優秀なのだろうが決してお近づきになりたくないタイプだ。



ささやかな対策として、休日はTo Do Listを殴り書きして消している。が、それでも半端になったものをメモするのは難しい。中断は突然起こるからだ。

平日はなおさら無理だ。メモをする時間自体がない。



「『あと少し』というところで中断しておくと、再開するときに勢いがついて早く終えられる」とかいうライフハックだかビジネスハックの記事を読んだことがあるが、そういう問題じゃない。育児では中断する段階を選べないのが問題なのだ。まあビジネスハックと育児は別物なので、そこで憤るのもお門違いなのであるが。



というわけで、日常にも栞機能が欲しいなあと思う今日このごろ。その前後を読み返す時間は必要だけど、それでも栞があるとないとでは、作業時間のかかり方が違うんじゃないかなと思う。